弁護士報酬の決め方には,大きく分けて,「着手金・報酬金制」と「時間制(タイムチャージ制)」の2種類があります。日弁連の旧報酬基準規程がこの2種類を認めていたため,多くの法律事務所では,それを踏襲しています。
「着手金・報酬金制」というのは,ご依頼される事件の性質上,結果に成功・不成功がある場合に用いられる方式です。ご依頼を受けたときにいただくのが「着手金」であり,事件が解決したときに,その成功の度合いによっていただくのが「報酬金(いわゆる成功報酬)」です。なお,「着手金」は手付金ではありませんので,ご依頼いただいた後に弁護士を解任しても,原則として,返還されません。
着手金は,昭和59年改正前の旧報酬基準規程では,「手数料」と呼ばれていました。また,報酬金は「謝金」と呼ばれていました。このことからわかるように,着手金は,事件の委任事務処理に対する対価(手数料)という性質を持っています。したがって,予想される時間や労力によってその金額を増減することになります。他方,報酬金は,得られた経済的利益などの成功の度合いによって増減することになります。
例えば,自己破産の申立てであれば,現在では,免責が許可されないことはめったにありませんので,私たちの事務所では,原則として着手金のみとし,報酬金はいただかないことにしています。弁護士の努力によって,成功したとは言えないからです(ホームページを見ると,手数料制にしている法律事務所もあります。)。同様に任意整理の場合でも,いわゆる減額報酬(利息制限法に違反した利息を元本に充当して債務額を減額する。)は,現在では当然のように減額が認められていますので,原則としていただいておりません。
他方,「時間制」というのは,執務に要した時間を基準にして報酬を算定する方式です。ご依頼される事件の性質上,結果に成功・不成功がない場合に用いられることが多いですが,成功・不成功がある場合にも,前記の着手金・報酬金制に代えて用いられることがあります。
時間制の額は,弁護士によって異なりますが,交通事故の弁護士費用特約の場合に利用される日弁連リーガル・アクセス・センターの報酬基準では,1時間2万円と定められています。法律相談は1時間1万円とする法律事務所が多いですが,これは市民法律相談が市民サービスであるという側面があることを考慮したためであり,事件の依頼を受けたときは,1時間2万円以上(企業からのご依頼ですと,1時間3万円から5万円程度になることもあります。)とする弁護士が多いようです。
「着手金・報酬金制」と,「時間制」には,それぞれメリットとデメリットがあります。一概にどちらがよいとは言えません。
「着手金・報酬金制」の場合には,早く解決すればするほど,また,成功の度合いが大きければ大きいほど,弁護士にとって有利になりますので,弁護士と依頼者の利害が一致します。そのため,弁護士は,できる限り早く,依頼者に有利に解決するように努力するインセンティブが働く,と言われます(手続きの公正さをゆがめるため,諸外国では報酬金を請求することが禁止されてている場合もありますが,わが国ではそうした規制はありません。)。
他方,事件の依頼を受ける時点では,解決に要する時間や労力,得られる経済的利益の見込みが立たないという問題があります。見込みが立たないときは,いちばん悪い事態を想定しますので,着手金が高額になることがありえます。また,経済的な利益の額が高額になると,報酬金の額が高額になりすぎるという問題もあります。もちろん,現実に要した時間や労力を考慮して減額するなどの調整はしますが,私たちにとっても,報酬金が高すぎたり低すぎたりすることが起こりえます。
「時間制」は,経済的利益の算定が難しい場合や,経済的利益の額が高額である場合には,弁護士報酬の管理がしやすいというメリットがあります。そのため,賠償額が低額になる物損交通事故や,企業からのご依頼で用いられることが多いです。
時間制の難しいところは,弁護士によって,時間単価が異なることです。例えば,同じ1時間でも,経験の浅い弁護士と,経験豊富な弁護士とでは,当然,1時間当たりの業務効率が異なります。自分自身の経験に照らしても,1年目のときは5〜10時間かかっていた仕事が,いま(12年目)は1〜2時間あれば同じ仕事ができる,ということがあり得ます。しかし,継続的にご依頼いただく顧問先であればともかく,はじめてのご依頼のときには,時間単価が適正なのかの判断が難しいという問題があります。
また,時間制の場合には,時間をかければかけるほど高額になってしまうという問題があります。そのため,契約の際に上限を決めることが一般的です(日弁連リーガル・アクセス・センターの場合には,63万円が上限と定められています。)。
「着手金・報酬金制」と「時間制」のいずれを選択するかは,契約により決まりますので,弁護士からよく説明を受けて,納得したうえで契約するようにしてください。
(田岡)
「着手金・報酬金制」というのは,ご依頼される事件の性質上,結果に成功・不成功がある場合に用いられる方式です。ご依頼を受けたときにいただくのが「着手金」であり,事件が解決したときに,その成功の度合いによっていただくのが「報酬金(いわゆる成功報酬)」です。なお,「着手金」は手付金ではありませんので,ご依頼いただいた後に弁護士を解任しても,原則として,返還されません。
着手金は,昭和59年改正前の旧報酬基準規程では,「手数料」と呼ばれていました。また,報酬金は「謝金」と呼ばれていました。このことからわかるように,着手金は,事件の委任事務処理に対する対価(手数料)という性質を持っています。したがって,予想される時間や労力によってその金額を増減することになります。他方,報酬金は,得られた経済的利益などの成功の度合いによって増減することになります。
例えば,自己破産の申立てであれば,現在では,免責が許可されないことはめったにありませんので,私たちの事務所では,原則として着手金のみとし,報酬金はいただかないことにしています。弁護士の努力によって,成功したとは言えないからです(ホームページを見ると,手数料制にしている法律事務所もあります。)。同様に任意整理の場合でも,いわゆる減額報酬(利息制限法に違反した利息を元本に充当して債務額を減額する。)は,現在では当然のように減額が認められていますので,原則としていただいておりません。
他方,「時間制」というのは,執務に要した時間を基準にして報酬を算定する方式です。ご依頼される事件の性質上,結果に成功・不成功がない場合に用いられることが多いですが,成功・不成功がある場合にも,前記の着手金・報酬金制に代えて用いられることがあります。
時間制の額は,弁護士によって異なりますが,交通事故の弁護士費用特約の場合に利用される日弁連リーガル・アクセス・センターの報酬基準では,1時間2万円と定められています。法律相談は1時間1万円とする法律事務所が多いですが,これは市民法律相談が市民サービスであるという側面があることを考慮したためであり,事件の依頼を受けたときは,1時間2万円以上(企業からのご依頼ですと,1時間3万円から5万円程度になることもあります。)とする弁護士が多いようです。
「着手金・報酬金制」と,「時間制」には,それぞれメリットとデメリットがあります。一概にどちらがよいとは言えません。
「着手金・報酬金制」の場合には,早く解決すればするほど,また,成功の度合いが大きければ大きいほど,弁護士にとって有利になりますので,弁護士と依頼者の利害が一致します。そのため,弁護士は,できる限り早く,依頼者に有利に解決するように努力するインセンティブが働く,と言われます(手続きの公正さをゆがめるため,諸外国では報酬金を請求することが禁止されてている場合もありますが,わが国ではそうした規制はありません。)。
他方,事件の依頼を受ける時点では,解決に要する時間や労力,得られる経済的利益の見込みが立たないという問題があります。見込みが立たないときは,いちばん悪い事態を想定しますので,着手金が高額になることがありえます。また,経済的な利益の額が高額になると,報酬金の額が高額になりすぎるという問題もあります。もちろん,現実に要した時間や労力を考慮して減額するなどの調整はしますが,私たちにとっても,報酬金が高すぎたり低すぎたりすることが起こりえます。
「時間制」は,経済的利益の算定が難しい場合や,経済的利益の額が高額である場合には,弁護士報酬の管理がしやすいというメリットがあります。そのため,賠償額が低額になる物損交通事故や,企業からのご依頼で用いられることが多いです。
時間制の難しいところは,弁護士によって,時間単価が異なることです。例えば,同じ1時間でも,経験の浅い弁護士と,経験豊富な弁護士とでは,当然,1時間当たりの業務効率が異なります。自分自身の経験に照らしても,1年目のときは5〜10時間かかっていた仕事が,いま(12年目)は1〜2時間あれば同じ仕事ができる,ということがあり得ます。しかし,継続的にご依頼いただく顧問先であればともかく,はじめてのご依頼のときには,時間単価が適正なのかの判断が難しいという問題があります。
また,時間制の場合には,時間をかければかけるほど高額になってしまうという問題があります。そのため,契約の際に上限を決めることが一般的です(日弁連リーガル・アクセス・センターの場合には,63万円が上限と定められています。)。
「着手金・報酬金制」と「時間制」のいずれを選択するかは,契約により決まりますので,弁護士からよく説明を受けて,納得したうえで契約するようにしてください。
(田岡)