香川県丸亀市の弁護士・田岡直博と佐藤倫子の法律事務所です。

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香川県丸亀市の弁護士ブログ
お城の見える窓から

東京弁護士会春秋会『実践 訴訟戦術―弁護士はみんな悩んでいる』

 研修を担当していると,内容は間違ってはいないが,どこかピントがずれている,という起案をときどき見かけます。分量が多すぎたり,メリハリがなかったり,書面の書き方に違和感があったり。これらの例は,ロースクールを出てひととおりの「知識」は備わっているのだけれど,「経験」が不足していることを示しているのでしょう。

 訴状の「書きぶり」や,法廷での「立ち振る舞い」,依頼者との「距離の取り方」といった言語化しづらい(しかし,実務をやっていく上では不可欠な)経験知(ノウハウ)は,かつては実務修習や最初に就職した事務所のボス弁から自然と学ぶものでしたが,いまは新人弁護士が増えたために指導弁護士の側にも余裕がなくなってきているようです。

 かくいう私も,果たして自分のスタイルが弁護士として標準的なものかと言われれば,自信はありません。研修を担当していると,たくさんの起案に目を通しますので,ある程度のバランス感覚は身につけているつもりですが,それでも,ときどき他の弁護士や書記官・裁判官から指摘されて,恥ずかしい思いをすることがあります。その意味では,自分の相対的な立ち位置を知ることができるというのは,大変ありがたいことです。

 本書は,「新人」「若手」「中堅」「ベテラン」による座談会形式となっています。発言者が匿名化されているがゆえに,活字にしづらいノウハウや本音が随所に見られ,本書を類例のないものにしています。例えば,証人テストの項目で,質問と答えが書かれた尋問事項を証人に渡し,正しい答えができるようになるまで徹底的にやる,などと発言されているのを見て,「おいおい,それじゃあ検察官と同じだよ!」と突っ込みを入れたり,しかし,実際にそうしている弁護士が少なくないことは事実だろうし,何も準備しない弁護士よりずっとましか,と考えてみたり。存分に楽しめます。

 いずれにしても,本書に登場する「新人」「若手」「中堅」「ベテラン」は,立場は違えど,優れた弁護士であることが伝わって来ます。そして,それらの発言を全体として読むことで,弁護士にもさまざまなスタイルがあり,各自が独自のノウハウを持っていることが,深みをもって理解できる仕組みになっています。おそらく座談会の内容は,単にテープ起こしをしただけではなく,相当編集が行われているのでしょう。

 これで,2300円は安いです。ぜひ,これから実務に出る新人弁護士や司法修習生にお勧めしたいです(なお,私は著者及び出版社とは何の利害関係もありませんので,念のため。)。

 なお,本書と類似した企画として,かつて二弁フロンティアに連載された「裁判官アンケート 東京地裁民事部裁判官109名から聞きました」があります(二弁フロンティア2003年11月号〜2004年4月号。後に2004年別冊に所収)。おそらく,「クイズ100人に聞きました」をもじったのしょうが,裁判官の本音を知ることができて,非常に面白いです。こちらも,一読を勧めます。
 
 訴訟戦術

(田岡)
| 2014.05.19 Monday|読書案内comments(0)|-|

最相葉月『セラピスト』

 数年ほど前に,箱庭療法を受けたことがあります。砂をかき混ぜて渦を作ったり,山を作ったり。下地の水色が見えると,まるでそこから水が湧き出るような勢いを感じたり。子ども心に返って楽しみました。てっきりできた作品を解釈するものと思っていましたが,カウンセラーさんは,なるほどねえと感心するばかり。狐につままれたような,でも,心地よい気分になったものでした。
 
 さて,最相葉月さんの最新作は,「二人の巨星,故河合隼雄の箱庭療法の意義を問い,精神科医の中井久夫と対話を重ね,セラピストとは何かを探る」という触れ込み。これは買わないわけにいきません。ただ,読後感は,たいそうな触れ込みのわりには(薄い本ですので仕方ありませんが)解説が邪魔に感じたり,掘り下げが物足りなく感じるところはあり,これで終わり?と物足りなく感じました。ちょっと残念です。

 ただ,中井久夫先生の絵画療法は逐語録と,スケッチが付いており,絵画療法の雰囲気を追体験できたのが,何よりの収穫でした。やっぱり,解釈はしないんですね。


 セラピスト

(田岡)
| 2014.04.03 Thursday|読書案内comments(0)|-|

堀川恵子『教誨師』

 死刑囚の丁寧な取材を続けている堀川恵子さんの新しい著作が出ました。前作『永山則夫 封印された鑑定記録』では永山則夫の精神鑑定をおこなった鑑定医を取り上げていましたが,今回は死刑囚の面接を行う教誨師を取り上げています。

 これまで死刑に関する著作といえば弁護人や研究者の立場からする死刑廃止論がほとんどでしたが(例外的に犯罪者の立場からする死刑存置論もあります。),堀川さんは死刑囚にかかわるさまざまな立場の人々を丁寧に取材しておられます。

 とりわけ印象的なのは,面接を続けてきた死刑囚の執行に立ち会う心理的負担に耐えられず,アルコール依存症になってしまったというエピソードですが,これを打ち明けたときの死刑囚の反応からは,ピア・カウンセリングという言葉が思い浮かびました。弁護人はもちろん,援助職に携わる者には必読の書と言ってよいでしょう。



 教誨士

(田岡)
| 2014.02.26 Wednesday|読書案内comments(0)|-|

『流星ひとつ』

 沢木耕太郎の書く文章が好きで、新著が出るとつい買ってしまいます。古くは『テロルの決算』『危機の宰相』そして、ご存じ『深夜特急』(マカオ編がいちばん好きです)。最近では『キャパの十字架』『旅の窓』など。彼の文章には、車窓を眺めながら揺られているようなリズムがあって、どこに連れて行かれるのか分からないけれど、このままずっと揺られていたい、という気持ちにさせられますね。
 
 『流星ひとつ』は、藤圭子のインタビューですが、いわゆる字の文なしの、台詞のみで構成するというスタイルが用いられています。私は藤圭子を宇多田ヒカルによって知りましたので、当時の藤圭子を知りませんが、それでも彼女の魅力がぞんぶんに伝わってきて、まったく飽きることがありませんでした。とりあえず、ウォッカとレモンを買ってきて、ウォッカ・トニックを飲んでいます。
 
 
流星ひとつ
(田岡)
| 2013.11.05 Tuesday|読書案内comments(0)|-|

『行ってもイイ精神科、ダメな精神科』

 これは問題作です。「病歴30年のうつのプロ」が東京23区にある精神科のクリニックを回って、その評価を書き連ねたルポの類いなのですが、何しろ著者は精神保健福祉士の資格を持つ正真正銘のプロ。言ってみれば、法律事務所職員が他の法律事務所で法律相談を受けて、格付けするようなものです。

 Amazonのブックレビューでは、評価が主観的過ぎるとか、公共資源の浪費であるという厳しい評価がなされています。しかし、レビューの中で、精神科医の方がコメントされているように、精神科医ないしクリニックにとっては、非常に有益な教科書であることは間違いないと思われます。

 そもそも患者の感じ方は主観的なものですし、私もこの本に客観性を期待してはいません。しかし、受付の応対、待合室の雰囲気、カルテの取り方や問診の仕方など、患者目線の率直な評価が綴られており、私たち弁護士にとっても、普段の業務のあり方を反省させられる材料がたくさん詰まっていると感じました。


 行ってもイイ精神科

(田岡)
| 2013.11.05 Tuesday|読書案内comments(0)|-|

『ル・コルビュジエの家』

 近隣紛争というのは、いつの時代もやっかいなものです。きっかけは些細なことでも、隣同士ですから顔を合わせないわけにもいきません。しだいに顔を合わせること自体がストレスになり、大事件に発展することさえないとは言えません。
 モーニングに連載中の漫画「カバチタレ」では、境界をめぐって不動産会社の営業マンが逮捕されましたし、フジテレビで放映中の「リーガル・ハイ」では、ゴルフクラブで殴りかかってきたお隣さんをハサミで刺すという傷害事件が起きました。
 この映画は、そんな近隣紛争をテーマにした映画です。カットと台詞が多い日本映画と違って、長回しと沈黙、そして大胆なカメラワークによる美しい映像に時間を忘れます。ル・コルビュジエの家を舞台に撮影されていますので、建築やデザインが好きな方にもお勧めです。
ル・コルビュジエの家
(田岡)
| 2013.11.05 Tuesday|読書案内comments(0)|-|

『責任能力を争う刑事弁護』

 この本は、おそらくわが国で初めて、責任能力あるいは精神鑑定に関して、弁護人の立場から記述した本でしょう。これまで、精神科医(中田修先生、中谷陽二先生、福島章先生。最近では、精神鑑定書作成の手引き、リュミエールの五十嵐禎人先生、岡田幸之先生が有名ですね。)の立場から記述された本はあっても、法曹三者の立場から記述された本はほとんどなく、あっても裁判官(高橋省吾元判事の昭和59年決定の最高裁調査官解説、『刑事事実認定(上)』など)の立場から記述されたものがほとんどでした(数少ない例外として、渡辺一成先生の判例タイムズの論考と、北潟谷先生の札幌弁護士会会報の論考は読み応えがあります。また、私的鑑定と訴訟能力に関しては、金岡繁裕先生の論考は必読です。)。

 内容的には、中島直先生(多摩あおば病院)の講演録が必読であり、巻末の判決一覧も有用です。とくに中島先生の講演は含蓄があり、丁寧に読んでいくと思わぬ発見があります。ただ、それ以外の部分は、やや記述が薄く、分析が不足しているように感じたのも事実です。おそらくは,これまで責任能力を争う事件を担当したことのない弁護士向けに,最低限の知識を伝えることを目的にしたためでしょう。いずれにしても、わが国では弁護士が執筆した責任能力をタイトルに関する書物は初めてであり、これから責任能力を争う刑事弁護に取り組む若手弁護士には必読の書であることは間違いないでしょう。

 責任能力と精神鑑定は、私の主要な研究テーマの一つであり、常日頃から考えていることでもあります。自由と正義の平成25年10月号にも、「責任能力を争う裁判員裁判の弁護活動(3)」と題する論考を投稿しましたが、こうしたテーマは一人(あるいは、菅野亮先生と二人)で考えていても、なかなか目新しいアイデアが思い浮かぶわけでもなく、煮詰まってしまうところがありますので、他人が書いた本を読ませていただき、自分なりに思考を深化させる契機としたいです。そして、望むべくは、この本に負けないような充実した内容を盛り込んだ弁護活動の手引き書を、いずれ世の中に送り出したいと密かに願っています。


 責任能力を争う刑事弁護

※2014/5/20に訂正しました。

(田岡)
| 2013.08.30 Friday|読書案内comments(2)|-|

鈴木仁志『民法改正の真実』

 民法(債権法)改正の議論が始まった10数年前に京都大学で山本敬三先生,潮見佳男に教えを受けましたので,民法(債権法)改正の動きはごく自然なこととして受けとめていました(民法改正については,内田貴『民法改正』大村敦志『民法改正を考える』が手軽に読めます。)。

 しかし、実際に改正作業が始まってみると、そのプロセスの不透明さや、改正作業が学者中心に進められていることに不満が噴出し、実務家からは反対あるいは拙速との意見が表明されています(学者の立場からの意見ですが、加藤雅信『民法(債権法)改正』は問題点がよく分かります。)。

 一般論として、百年も経てばいろいろと不具合が生じるのは当然ですので、改正自体は必要ではないかと思いますが、いまは全面改正に賛成か反対かで意見が対立しており、なかなか個別のイシューの議論にならず、憲法改正と同じような状況にあるように思われます(債務不履行の免責事由などは,無理に新しい言葉を使わなくてもよいのではないかと私も思います。)。
 
 鈴木先生のご意見は,私から見ればやや極端であり,もはやイデオロギー対立の次元を超えて,内田貴先生に対する個人攻撃になってしまっているようにも見受けられますが(とくに平井宣雄先生の論文を引用する必要までは,なかったのではないかと思われます。),反対の立場の意見を知る上では有益と思われました。

民法改正の真実

(田岡)
| 2013.04.11 Thursday|読書案内comments(0)|-|

原和良『弁護士研修ノート』

 一般社団法人弁護士業務研究所の原和良先生の著書。業務と公益的な活動の両方にバランスよく目配りされており,具体的なケースも豊富です。世代が比較的近いからでしょうか。読んでいて,なるほどそうだよなと共感することが多いです。

 新人弁護士に書かれた本のようですが,私たちが読んでも勉強になります。おすすめです。


 弁護士研修ノート

(田岡)
| 2013.04.11 Thursday|読書案内comments(0)|-|

渡辺久子『子どもを伸ばすお母さんのふしぎな力』

 先週の土曜日,日弁連のシンポジウムで,小児精神科医の渡辺久子さん(慶應大学医学部小児科研究室)のお話をうかがう機会がありました。「日本の司法は 子どもの実態から遊離している」という渡辺先生のお話は,永年の経験に裏打ちされた大変説得力あるもので,涙腺の弱い私などは,何度も涙してしまいました。「子どもからAKU(あぶない きたない うるさい)を奪うと、子どもは子どもらしさを失ってしまう。本当の生きる力は育たない」ーなるほど…こちららまでグサッと来ます。

 この本は,現代社会において,如何に親たち自身がストレスを受け,未熟で,如何に子どもたちが深く傷ついているか,小児精神科医としての豊富な事例から説いています。
 一方で,題名にある通り,母親には子どもを癒す治癒力がある,抱きしめる,抱っこする,甘えさせることで子どもに素晴らしい安心感と成長を与えることができる,今からでも育て直しは可能!と,母親の力を讃え,母親たちを励ますとともに,母親が子どもを甘えさせられるには,母親自身の心の安定が必要であり,そのためには周囲の支えが不可欠であることも指摘します。
   「親と子は 別れるためにいっしょに暮らす」「親子は互いに相手を映し出す」など,ひとこと一言が示唆に富み,日々の子育てを反省させられるとともに,母親であることの喜びを再発見し,明日への勇気をもらえる,そんな本です。子育てに悩んでいるお母さん,お父さん,子どもを取り巻く大人たちすべてに読んでいただきたい本です。

子どもを伸ばすお母さんのふしぎな力

(佐藤)
| 2013.04.09 Tuesday|読書案内comments(0)|-|

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