先週の土曜日,日弁連のシンポジウムで,小児精神科医の渡辺久子さん(慶應大学医学部小児科研究室)のお話をうかがう機会がありました。「日本の司法は 子どもの実態から遊離している」という渡辺先生のお話は,永年の経験に裏打ちされた大変説得力あるもので,涙腺の弱い私などは,何度も涙してしまいました。「子どもからAKU(あぶない きたない うるさい)を奪うと、子どもは子どもらしさを失ってしまう。本当の生きる力は育たない」ーなるほど…こちららまでグサッと来ます。
この本は,現代社会において,如何に親たち自身がストレスを受け,未熟で,如何に子どもたちが深く傷ついているか,小児精神科医としての豊富な事例から説いています。
一方で,題名にある通り,母親には子どもを癒す治癒力がある,抱きしめる,抱っこする,甘えさせることで子どもに素晴らしい安心感と成長を与えることができる,今からでも育て直しは可能!と,母親の力を讃え,母親たちを励ますとともに,母親が子どもを甘えさせられるには,母親自身の心の安定が必要であり,そのためには周囲の支えが不可欠であることも指摘します。
「親と子は 別れるためにいっしょに暮らす」「親子は互いに相手を映し出す」など,ひとこと一言が示唆に富み,日々の子育てを反省させられるとともに,母親であることの喜びを再発見し,明日への勇気をもらえる,そんな本です。子育てに悩んでいるお母さん,お父さん,子どもを取り巻く大人たちすべてに読んでいただきたい本です。