香川県丸亀市の弁護士・田岡直博と佐藤倫子の法律事務所です。

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香川県丸亀市の弁護士ブログ
お城の見える窓から

杉山孝男『兵士は起つ』

 自衛隊ほど,東日本大震災によって存在感を発揮した組織はないんじゃないでしょうか。そう思えるぐらい,震災後に東北に行けば,そこかしこに自衛隊の部隊があって炊き出しやお風呂を設営してくれていましたし,住民からも感謝の言葉を耳にしました。

 『兵士は起つ』は,自衛隊のルポを書かせたら右に出るものはいない杉山隆男の最新作です。自衛隊に興味がなくても,あの日,あの場所で何が起こったのかが一人一人の自衛官の視点で克明に綴られており,良質なノンフィクションとしても十分に読めます。

 羽田空港で読み始めてしまったらとまらなくなり,一気に読み終えてしまいました。

 兵士は起つ

(田岡)
| 2013.04.08 Monday|読書案内comments(0)|-|

佐藤幹夫『十七歳の自閉症裁判』

 大阪寝屋川事件の事件発生から裁判までを追ったノンフィクション。レッサーパンダ事件を扱った前作(『自閉症裁判』)に続き,本書でも自閉症を患った被疑者・被告人の刑事事件を扱っています。

 著者の佐藤幹夫さんは21年間養護学校に勤めていただけあって,被疑者・被告人に対するまなざしが,やさしいですね。



 十七歳の自閉症裁判


(田岡)
| 2013.04.08 Monday|読書案内comments(0)|-|

斎藤美奈子『妊娠小説』

 ご存じ斎藤美奈子のデビュー作にして,問題作です。「日本の近代文学には,『病気小説』や『貧乏小説』とならんで『妊娠小説』という伝統的なジャンルがあります」という書き出しからして問題ですが,要するに,近現代の小説の中から「望まない妊娠」を取り扱ったものを拾い上げ,そこに共通する要素を分析するという,けっこう地味な作業をまとめたものです。

 著者は,そこには驚くべき類似性が見られたと分析していますが,たしかに弁護士として法律相談を受けていても,「望まない妊娠」はよくある相談の一つです。水商売の女性から「妊娠した」と告げられて慌てふためき,法外な金額の慰謝料を支払うという古典的なパターンの相談も,いまだに存在します。

 こういう場合の「妊娠した」は十中八九嘘に決まっているのですが,家族に知られたくないという弱みを握られているため,請求に応じてしまう男性がいるようです。こういうときは毅然とした態度で,拒絶するにこしたことはありません。事前に『妊娠小説』を読んで予習していれば,すこしはうまく対処できることでしょう。夫婦あるいは男女間の紛争というものは,昔からほとんど変わっていないのです。

(田岡)
| 2013.04.02 Tuesday|読書案内comments(0)|-|

石田省三郎『「東電女性社員殺人事件」弁護留書』

 東電女性社員殺人事件(東電OL殺人事件)について,昨年,再審無罪判決が言い渡され,ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの無罪が確定したことは記憶に新しいところです。

 本書は,弁護人を務めた石田省三郎先生の手によるものであり,被害女性を追ったルポルタージュ風の佐野真一『東電OL殺人事件』や,再審請求審から再審無罪に至るまでの取材過程を綴った読売新聞『東電OL事件−−DNAが暴いた闇』などとは一線を画しています(読売新聞の本についての感想は,桜丘法律事務所のブログをご覧ください。)。

 石田先生らしく文章は簡潔であり,読みやすいのですが,言葉の端々から15年にわたり重責を背負い,事件と向き合ってきた重みが感じられます。あらためて,この事件はDNA鑑定により無罪となるべき事件ではなく,本来,第一審の無罪判決が確定するべき事件だったのだと感じました。

 版元は書肆アルスという小さな出版社であり,部数も初版は200−300部程度と非常に少なかったようですが,増刷されたのかamazonでも入手することができますので,ぜひご一読ください。
 


 東電女性社員殺人事件


(田岡)
| 2013.04.02 Tuesday|読書案内comments(0)|-|

トーマス・トウェイツ『ゼロからトースターを作ってみた』

 「HONZ ノンフィクションはこれを読め!」というノンフィクション好きにはたまらない書評サイトがありますが,そこで絶賛されていたので購入してみました(現在amazonでは品切れですが,中古であれば手に入ります。)。

 イギリスの学生さんがゼロからトースターを作るというそれだけの話なのですが,「ゼロから」という意味が問題であり,鉄は鉄鉱石から,プラスチックは原油から,ゴムはゴムの木からというように,原料から,しかも他人の手を借りずに作るという無謀な企画です。

 このような無謀な企画にチャレンジを続けるさまを通じて,トースターという現代社会において最もポピュラーな家電製品の一つでさえ,私たちにはそれを作ることができない(それどころか,それがどのようにできているかすら知らない。)ということを思い知らされるという,文明批判的な一冊に仕上がっています。

 ただ,内容は期待していたほどではなく,企画に負けている感じがしました。期待しすぎないで,気楽に読むのがよいと思います。


ゼロからトースターを作ってみた

(田岡)
| 2013.03.17 Sunday|読書案内comments(0)|-|

須藤生『スウェーデンで家具職人になる!』

 法律とはまったく関係のない話題で恐縮ですが,須藤生『スウェーデンで家具職人になる!』を読みました。スウェーデンのマルムステンCTDという学校に入学し,試行錯誤しながら家具を製作し,一人前の家具職人になる過程を綴ったものです。

 私がこの本を手に取ったのは,北欧家具に関心を持ったからです。法律事務所には,心に悩みを抱えた方がいらっしゃいます。離婚,交通事故,刑事事件,こんな問題を抱えたら,ただでさえ気が滅入りますよね。しかも,はじめて弁護士に相談するとなれば,なおさらです。せめて,事務所の雰囲気はあたたかく,居心地のいいものにしたいと考えました。

 こんな思いから,私たちの事務所では,北欧の木製家具をそろえています。スチールの家具と比べると,木製家具は傷つきやすく,重くて扱いづらいのですが,それもまた味わいがあります。

 そんなふうに家具に関心を持ち始めたときに手に取ったのが,この本です。材料を選び,切断してオイルを塗り,図面どおりの家具に仕上げていく過程は読んでいるだけでも,わくわくします。そして,完成した作品のうつくしさに惚れ惚れしてしまいます。

 考えてみると,弁護士の仕事にも同じような面があります。依頼者から聴き取った言葉をもとに,法律と照らし合わせながらストーリーを描き出し,他人を説得する論理を作り上げて行く過程は,まさに職人の仕事です。とくに裁判員裁判における法廷弁護はドラマティックであり,優れた弁護人の弁論はひとつの芸術作品とさえ言えます。


スウェーデンで家具職人になる!

(田岡)
| 2013.02.13 Wednesday|読書案内comments(0)|-|

D・ジョンソン『孤立する日本の死刑』

 著者のデイヴィッド・ジョンソンはハワイ大学の法社会学者であり,『日本の検察官制度』でアメリカ刑事学会国際刑事部門2002年最優良図書賞を受賞しました。2冊目の単行本となる本書は,死刑というセンシティブであり,かつ,論争的なテーマを扱うものです。

 死刑に関しては,すでに多くの書籍が出版されており,存廃のいずれの立場からも論じ尽くされた感があります。しかし,わが国においては,死刑をめぐる議論は(廃止論であっても,たとえば,森達也『死刑−−人は人を殺せる。でも人は,人を救いたいとも思う』のように)情緒的あるいは観念的な議論になりがちであったように思われます。 

 しかし,本書は,それらとは異なります。アジアにおける死刑の動向が実証的なデータに基づいて,丁寧に描き出されています。とりわけ,香港 とシンガポールにおける死刑執行数と犯罪抑止力に関するグラフは衝撃的であり,永山判決における「一般予防の見地からも極刑がやむを得ない」と認められる 場合などあり得ないのだという指摘には,なるほどと唸らされました。

 欧米においては矯正処遇や死刑のあり方に関して,このような実証研究がさかんなのに,わが国にはこうした種類の研究がほとんど見られないのはどうしてでしょうか。

 存廃の立場はさておいても,まずは議論の出発点として広く読まれるべき良書ではないかと思います。




孤立する日本の死刑

(田岡)
| 2013.02.12 Tuesday|読書案内comments(0)|-|

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